

النجم【アラビア語】
星 アン=ナジュム 朗読音声
星 アン=ナジュム【日本語訳】
慈悲あまねく、慈悲深いアッラーの御名において。
1 沈みゆくときの星にかけて。2 あなたがたの仲間 (ムハンマド) は迷ってもおらず、誤ってもおらず、3 彼 (自身) の欲望を語っているのでもない。4 それは、啓示されるべく啓示されたものに他ならない。5 彼にそれを教えたのは、強大な力ある者、6 すぐれた知力の所有者。その者は自らの姿を立ち上がらせた、7 地平のもっとも高いところに。8 そののち、降臨して近づいた、9 弓にして二本 (の距離) か、あるいはそれよりも近いか。10 そののち、かの御方はそのしもべに、御自らの啓示したところを啓示した。11 (預言者の) 心は、それが見たものについて嘘をつかない。12 彼が見たものについて、あなたがたは彼と言い争うのか。13 彼は別のときにもその降臨を目にしている、14 最果てのスィドラの樹の許で。15 そのそばには、安息の楽園がある。16 覆うものが (秘密を隠そうと) スィドラの樹を覆ったとき、17 (預言者の) 視界は揺らがず、それでいて度が過ぎることもなく、18 まさしく彼は、主のもっとも大いなる御しるしを見た。19 あなたがたは考えたことがあるのか、アッラートとアル・ウッザーのことを。20 加えて、第三のマナートのことも。21 あなたがたには男児があり、かの御方には女児があるというのか。22 それなら、それは奇妙な配分というもの。23 それらはあなたがたやその先祖が名づけた、ただの名前に過ぎない。アッラーはそれらに何の権威も下さなかった。彼らは憶測と自分自身の欲望に従っているだけ。彼らには、すでに主の導きが来ているというのに。24 それとも人間は、何でもほしいままにできるのか。25 来世もその前 (にある現世) も、アッラーに属するというのに。26 諸天にどれほど (多くの) 天使たちがいようと、アッラーにそうと望まれ、また喜ばれる者が許しを得た後でない限り、そのとりなしは何の役にも立たない。27 来世を信じない者は、天使たちに女の名前をつけるなどする。28 彼らはそれについて何の知識もなく、ただ憶測に従っているだけ。そして本当に憶測は、真理に対しては何の役にも立たない。29 (ムハンマドよ、) それゆえ、われらの戒めに背を向け、現世の生の他に何も欲さない者とは距離を置きなさい。30 彼らの知識はその程度のもの。道から迷う者については、あなたの主がもっともよく知っている。また、導かれた者についても、もっともよく知っている。31 諸天にあるもの、大地にあるもの、すべてアッラーに属する。この御方は、悪事をはたらく者にはその行いに応じて報い、また善事をはたらく者にはその最善をもって報いる。32 小さな過ちは別としても、大罪や不品行は避ける者たち。(彼らについては、) あなたの主は本当に赦しにおいて広大な御方。あなたがたを地上に生じさせたときから、またあなたがたが母の下腹の胚であったときから、あなたがたをもっともよく知る御方。それゆえ自分で自分のことを清らかだなどと思ってはならない。畏れる者について、もっともよく知る御方。33 (ムハンマドよ、) 考えてもみたか、(信仰に) 背を向ける者を、34 わずかばかり与えただけで、あとは物惜しみする者を、35 そうした者の許に、目には見えないものを見る知識があるとでもいうのか。36 それとも、ムーサーの書巻にあることを告げ知らされていないのか、37 また (使命を) 成し遂げたイブラーヒームのことも。38 荷を負う者が、他者の荷を負うことはできない。39 人間は、ただ自分が努力したことだけを得る。40 その努力は、いずれ (本人に) 見えてくるだろう。41 そののち、十分な報酬をもって報いられるだろう。42 本当に、終着はただあなたの主にある。43 笑わせも、泣かせもする御方。44 死なせも、生かしもする御方。45 本当に、雌雄の対を創造したのもこの御方。46 放たれるときの、精のひとしずくから。47 そして再び生じさせるのも、この御方による。48 富ませも、満たしもする御方。49 狼星の主たる御方。50 最初にアードを滅ぼしたのもこの御方。51 またサムード (の民) も、誰ひとりとして残さずに。52 またそれ以前には、ヌーフの民も、本当に彼らはもっとも不正で、もっとも逸脱していた。53 また転覆させられた諸々の町も。54 そして覆いがそれらを覆った。55 あなたがたの主の恩恵の、どれをあなたがたは疑うのか。56 この者は、昔の警告者と同じくひとりの警告者。57 避けがたいことが、(すぐ近くまで) 差し迫っている。58 それをさらけ出せる者は、アッラーを置いて他にない。59 あなたがたは、この話に驚くのか。60 そして笑うのか、泣きはしないのか。61 気晴らしにうつつを抜かすのか。62 アッラーにひれ伏し、仕えなさい。
星 アン=ナジュムの解説と解釈
☪︎ 御自らの啓示したところを啓示した
啓示はあくまでも神から下される。啓示を運ぶ大天使ジブリールは単なる使者に過ぎず、使徒に神のメッセージを伝える以上のことはできない。
預言者が天使たちと体験されたこと、啓示を授けられたことは、上記の節で説明されている。これらの出来事の実在性を裏付けるには、クルアーンの記述だけで十分である。クルアーンの奇跡的な説話は、それが神の書であることを証明している。そして、その書物のすべての記述は、真正なものとして受け入れられなければならない。
☪︎ 主のもっとも大いなる御しるしを見た
これらの節では、預言者の「夜の旅」について言及されている。 預言者ムハンマドが夜の旅を通して七層の天を訪れた際のこと。ミウラージュ(昇天)の間に、彼は神の御しるしの数々を開示されるという栄誉ある経験をした。そうした栄光ある神の高みから、ひるがえって地上を見ればそこにはあまたの偶像とその崇拝者がはびこる無残な光景が繰り広げられている。ここでは人間は、四六時中「これを見よ!あれを見よ!」と強要されるのである。
☪︎ アッラートとアル・ウッザーのこと
イスラーム以前のアラブには、三種の主要な偶像があり、それらは「神の娘たち」と呼ばれていた。
アッラートとアル・ウッザー、そしてマナートは古代アラビアの神々である。 アッラートはタイフに、アル・ウッザーはマッカ近郊のナクラに、マナートはマディナ近郊のクダイドにあった。当時の一般的な信仰によれば、この3人は神の娘であり、崇拝されていた。この種の信仰は、根拠のない思い込みであることは間違いない。それ自体が矛盾している。多神教徒たちは、娘を持つことを卑しいことだと考えていた。そこで神は、もし創造主である神がご自身のために子供を創造するとしたら、娘を創造しただろうか、と自問自答するよう求めたのである。
☪︎ 何の知識もなく、ただ憶測に従っているだけ
石で神を作って崇拝すること、天使を「神の娘」と呼ぶこと、勧められて楽園に入るのを望むこと、これらはすべて不真面目な信仰である。不真面目な信仰とは、神の怒りを畏れない心の産物である。神への畏れは、無意味なおしゃべりに歯止めをかける。畏れを持たない者の心は、無駄なおしゃべりの洪水と化す。
神を畏れない者と議論しても無駄だ。そのような人たちは、理性や合理性を気にすることはなく、真理の言葉を受け入れる準備ができていない。対処する方法は一つしかなく、それは彼らを突き放すことである。全能の神はすべての人の内面を知っておられ、それに従って一人ひとりに対処される。
☪︎ 自分のことを清らかだなどと思ってはならない
アーダムが泥土から創造されたことは、 人間の弱さを思い起こさせるものである。人間は自らの創造の原点を忘れることなく、自惚れや傲慢に陥ってはならない。
人間的な弱さを持って人間は創造された。だから、天使のように純粋である必要はない。全能の神は、人間が何をすべきで何をすべきでないかについて、完全に導いておられる。ただし、軽い罪(lamam)、つまり一時の感情で悪事に手を染めた場合は、すぐに自分の過ちに気づき、それを恥じて主に許しを請うという条件で、人間は赦されることがある。
☪︎ 目には見えないものを見る知識があるとでもいうのか
これらの節は、ムギーラの息子ワリードについて啓示されたものである。彼は、一度はイスラームに入信したものの、のちに信仰から逸れていった。ワリードがイスラームに入信したとき、偶像を奉ずる者の一人が彼を非難した。ワリードは、自分は神の懲罰を怖れてイスラームに入信したのだと答えた。偶像を奉ずる者は、ワリードが代金を支払うなら彼の罪を引き受けると請け合った。するとワリードは彼の申し出を受け入れ、代金を支払い、信仰を放棄してしまった。
☪︎ 終着はただあなたの主にある
全能の神が、預言者たちを通して啓示した真実の集約と本質は、すべての人がその行いにふさわしい報いを受けなければならないということ。誰も自分の行いに起因する運命から救うことはできないし、他の誰も救世主にはなれない。この神の世界において、預言者の警告に心を動かされない者ほど愚かな者はいない。
☪︎ 狼星の主たる御方
「アッ=シウラー(狼星)」とは、シリウス星(おおいぬ座アルファ星)のこと。イスラーム以前のアラブにおいて、崇拝の対象となっていた星である。
この世のあらゆる出来事は超自然的な要因から発生するものであり、神以外の誰にもそれを引き起こすことはできない。幸福も悲しみも、生と死も、子孫繁栄も、富も貧困も、これらはすべて大いなる力のなせるわざなのだ。古代人は星を人生の決定要因として考えていたが、現代では自然法則がすべての出来事を支配していると考えられている。しかし実際には、これらの要因や原因の上に存在するものがあり、それは宇宙の主である神である。それならば、人間が神以外のものを自分の意識の中心に据えることが、どうして正当なことなのだろうか?
☪︎ 昔の警告者と同じくひとりの警告者
アード、ソドムとゴモラ、ルートの民やヌーフの民など、葬り去られた過去の民のことを思い出させる節である。不正をなせば、神の警告を受ける。警告を軽んじれば、マッカの住民も彼らと同様の道をたどることになる。
クルアーンに記されている預言者たちの歴史は、真理の拒否とその致命的な結末とが、同じ手の二本の指のように近しいものであることを示している。もし人間に理解する能力があれば、真理を否定して傲慢になると、神の怒りが自分に降りかかることを感じ取るだろう。しかし、人間は目の前にあるものを見ることができないほど陶酔状態にある。
THE STAR (an-Najm)【英語訳】
関連記事:山 📖 アッ=トール (トゥール)【第52章】クルアーン~海の波は聞く者にこの物語を伝えている
関連記事:月 📖 アル=カマル【第54章】クルアーン~善行を行う機会は与えられている
参考図書: